高橋 晋平
すべての人は、アイデアパーソンである。
僕は、アイデアマンです。
そう断言できるたった1つの理由。それは僕が、使えないアイデア、つまり「ボツネタ」を考えることが大好きで、頭に浮かんだ瞬間に、恥ずかしげもなくそれを口に出すからです。そのことが快感でもあり、カッコいいとさえ思っています。
アイデアを考えることは、ビジネスの現場では時に苦しい作業に思えるかもしれません。
仕事の課題を解決するアイデアを考えなければならないのに、何も思いつかない。
理屈が通ったアイデアでなければ、出してはいけないと思ってしまう。
使えないアイデアを提案したら厳しく否定された。
同僚の評価が恐くてアイデアを話せない。
考えることがもう嫌だ。疲れた…。
僕もいつもそんなことを考えていた頃があります。おそらくルーツは学生の頃。学校のテストは満点を目指すという教育を受けました。人前で間違ったことを言うのは恥ずかしい。だから新しいアイデアを考えることなんて苦手でした。
口に出すアイデアが、いいアイデアでなければ意味がないと思っていたのです。
僕はおもちゃ会社で10年間、企画開発の仕事をしました。企画のセンスがあるとは言えず、他の誰よりも企画をボツにされました。そのうちに、ボツになることを何とも思わなくなりました。ボツの痛覚「ボ痛覚」が死んだのです。
その瞬間僕は無敵になり、誰よりもたくさんのアイデアを考え、その中からヒット企画をどんどん作れるようになりました。
小さい頃は、誰もがアイデアで頭の中を一杯にしていたはずです。
僕は子供の頃、秋田県で山と川と田んぼに囲まれて暮らしました。木の枝を集めて家を作りました。雲は全部何かの形に見え、自分で物語を考えて本を書いたり、ゲームを作ったりしていました。
誰もが、一人ひとり違った環境で、違う体験をして大人になります。その一人ひとりが、他人とは全く違うアイデアを考えられるのは、当然のことです。
僕は「アイデア会議」が大好きです。偉い人が仕切って、みんなが黙ってしまう会議ではありません。アイデア会議のメンバーには、サッカーと同じようなポジションが必要です。会議を組み立てる司令塔、それぞれのアイデアというパスを出す人、いろいろなパスを受けてアレンジし、ゴールを決める人。全員が平等なチームメイト。これが、僕が日頃実施している、アイデア「爆発」会議というものです。驚くほど新しいアイデアが生まれます。
僕は今でも毎日、他人のアイデアに嫉妬します。
講師を務めたとあるワークショップで、高額でも親にあげたい「夢の」プレゼントをディスカッションしたことがありました。多くの人が「どんな病気も治す万能薬」と答えました。僕もそれがベストアンサーかなと思いました。そんな中1人の方が、「両親が睡眠中に、同じ夢を見られて、好きな所に旅行できる装置」と答え、大きな共感を集めました。僕はその時、講師でありながらそのアイデアに嫉妬しました。自分では絶対に出せないアイデアだったからです。
アイデア会議は何度やっても、どんなメンバーでも、本当に面白い。誰もが自分にしか出せない、すごいアイデアを考えられます。それは、思いついたボツネタを口々に言っている中から生まれるものです。脳より先に口がアイデアを言うこともあります。誰かが誰かのアイデアを拾い、すごいアイデアにしてシュートを決めることもあります。
僕は自分のものづくりをしながら、同時に、みなさんが「私はアイデアパーソンです。アイデアや企画を考え、実現させるのが楽しくて仕方ありません!」と言えるようになるお手伝いをしています。
でも本当は、みなさんのアイデアに触れて、嫉妬したいだけなのかもしれません。
高橋 晋平
株式会社ウサギ代表取締役
おもちゃ開発者、アイデア・コークリエーター
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