木村 東吉
既成概念に囚われない暮らし
河口湖に暮らし始めて16年が過ぎた。
「田舎に住んでる」と人に言うと、必ず「ログハウスか?」と訊かれるし、「自給自足のような生活?」との質問もよく受ける。が、残念ながらログハウスに住んでもいなければ、畑仕事も得意ではない。
自分で仕上げたこだわりの家に暮らしているが、それは都市生活とそれほど変わりないし、日々の糧は近所のスーパーマーケットで購入している。それに高速インターネットの恩恵も享受している。
暮らしている場所が湖や山に囲まれているだけであって、その暮らしぶりは都市生活者となんら変わりない。ここは東京から凡そ100キロの場所に位置し、言わばボクは「東京から100キロ離れたところに暮らす都会人」である。
しかし距離は100キロだが、標高は900m近くもあるので、冬の寒さは厳しいし、四季の変化が鮮やかである。それに夜は大人でも怖じ気づくほど暗いし、その暗さのおかげで夜空の星が奇麗だ。それに山々を暖色系に染める黄昏時も美しい。
つまり、我々の暮らしは「都市生活と田舎暮らし」のハイブリットで、「いいとこ取り」のライフ・スタイルとも言える。
さらにはこの「100キロの距離」は消費スパイラルからも適度な距離感を保ち、無駄な消費欲を刺激されることもなく、余分な贅肉を削ぎ落した暮らしが選択できる。
「アウトドア・ライフ」というのは決して場所を顕す言葉ではなく、既成概念に囚われない自由なスタイルを選択する暮らし、であると思っている。
そういう意味で都会に暮らす田舎人や、逆に田舎暮らしの都会人もいるかもしれない。
いろいろなところを旅して、様々な人々に出会い、違う文化に触れ、その中から己の暮らしに相応しいモノを取り入れる。
決して既成概念に囚われることなく、新しい思考や現象を素直に受け止める。
それが今の暮らしを形成しているのだ。
木村 東吉
アウトドア評論家
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