広瀬 真奈美
スマイルのちから
漠然として、唐突な質問で、すぐに答えられない質問ですね!
では、「自分の顔に自信がありますか?」と聞いたら、どうでしょう。
たぶん”あまりない”とすぐに答えられる人が、今の日本では、8割の人がそう答えるのではないかと思います。
自分の顔かたちに自信を持てず、そう答える人もいるでしょう。
一方で、自分の内面に自信がないために、そう答える人もいるでしょう。
しかし、顔に自信のある、と答えられる2割の人は、このどちらかではなくて、この両方に自信のある人なのです。顔かたちの自信は、顔の造形が美しいかどうかには、関係ありません。自分の顔が好きかどうかに関わってきます。
そう考えると、顔は見た目と内面の二つが揃って、自信が持てるものです。そして、顔は、自分の中身を映しているとも言えます。
顔は、人間として、そして身体の中で、最も興味深い部分ではないでしょうか。顔を作って10秒そのまま動かなければ、ある特定の印象が決まります。しかし、顔が動き出し、顔がしゃべり出したら、顔から、様々な情報が発信し出します。
表情研究家の私が「時代感度」を語るとすれば、今の時代に感じることは、文頭でお話しした見た目と内面のバランスが崩れている社会だということです。今の時代、メディアでよく目にするもの、それは「見た目」、一方で「心」に関する報道、この2点が今の日本に大きく関わっているテーマのように思います。社会を見回して見るとわかりやすいのですが、最近頻繁に起こっている偽造事件は、ばれなければOK的な風潮は、まさに「見た目」に偏ってしまった結果です。
年々増加するうつ病、自殺、殺人事件は、「心」に起きる偏りすぎた感情が暴走してしまった結果でもあると言えるでしょう。
日本人は、恥を大事にしてきた文化でもあります。
そして心も大事にしてきた文化でもあります。
“恥ずかしいからやめなさい。”
“人間、顔じゃない心だ。”
今もこの文化は残っていますが、何しろ経済が停滞し、その上どんどんグローバル化されていく現代、恥ずかしいも、顔じゃない、も言っていられない社会になっています。どんどん世の中がスピード化して顔も心も追いつかない人がたくさんいます。
そのために、引きこもりも増え続け、人とのコミュニケーションを避けるようになってしまった人も増えているのが現状です。
しかし一方で、欧米人のように明るく楽しくオープンにコミュニケーションを取れる人も増えています。実際にテレビに出てくるタレントは、こんなタイプが多いようです。そうなると、テレビに影響されやすい若者は、”こうでなければダメだ”いつもニコニコしていて明るく誰からも好かれる人になりたい”と自分とのギャップに悩みます。
そんなに悩むのなら、努力すればいい話なのですが、どうしたらいいかわからない。しかも周りの人が自分をどう見るかが、気になる。
そうなると自分の心を置き去りにして、見た目に走りがちになります。
でもインスタント的に作った見た目はすぐはがれ落ちます。
とりあえず挨拶はできても、その後がどうしていいかわからない。
数秒作り笑いが出来ても、その後の笑顔が続かなくなるのです。
以上のような状況もあり、ここ10~20年、日本人の感情能力が劣化しているように思えてなりません。言い換えれば、表情力も落ちているということです。ITの進化、メールや携帯でのやりとりも原因のひとつでしょうが、人と人との関係が希薄になっているのは、悲しいかな、否めません。今後、日本の力をつけるためには、今こそ、日本人の人間力が見えるコミュニケーションが必要となってきているのではないでしょうか。
そのためには、見た目というのは、自分の軸があってこそ、相手にインパクトを与えるのです。見た目の顔は、自分の内面を基本にして、考えるべきです。例えば、どんなに整形してキレイになっても、どんなに話し方を学んでも、内面が否が応でも必ず顔に出てきます。
人間は、ずっと昔から、顔を使ってコミュニケーションを取っているので、実は、顔を読み取るかなりの能力を備えています。
ですから、自分の顔を相手に見られていないと思ったら大間違いです。
無人島にたった一人で住んでいる人以外、顔はいつでも、どこでも誰かに見られているのです。
これから先、表情が乏しく、感情が劣化する人間も増えてくることも予想できます。テクノロジーが進化し、直接、面と向かって人と会話しなくとも、今の携帯電話の技術が進歩し続け、自分のテレパシーを電波で送れるような装置も出来るかもしれません。
そうなったら、顔の中で役割を担っている、目、口、耳も、退化していき、顔の筋肉も減り、顎もシャープになり、顔もシンプルになることでしょう。何かで見た無表情な宇宙人のような顔になることもあるかもしれません。
しかし、それでもこの先何百年経っても、顔は、残るのではないかと思います。ロボットの開発が進んでいますが、いかに人間らしさを作れるか、という点に着目している研究が多いのも、顔の大事さを物語っています。ロボットだけれども、ロボットの顔に人間の肌質を感じさせる弾力もあり、何より苦労しているのが、人間のような表情を作ること。
そのためには、人間の持つ感情をいかにロボットの表情に細工していくかということになります。表情は、感情が表現される顔のサインだからです。
人間がコミュニケーションにおいて、顔から感情が見えなくなったら、幸福さえも感じることもできなくなるでしょう。生きる意欲も、人間の意味さえもなくなってきます。
人間には、感情脳と呼んでいる大脳辺縁系という部分があります。人間に進化する以前から存在している古い脳です。
怒りや恐怖は、そのころからある原始的な感情であり、このような感情が存在していたからこそ、人間はここまで進化してこれたのです。
怒りがあるから、戦い生き延びようとする。恐怖によって、逃げて、命を守ろうとする。
この先、100年経っても200年経っても、人間として存在する限り、どうしてもコミュニケーションは必要であり、そのためには、表情と感情は、絶対不可欠でしょう。
だからこそ、これからの時代に、人間が滅びないために大事なのは、実際に顔と顔を見せ合って、つながる関係を大事にしていくこと。
人間だからこそ、心があるのです。
その心を映し出すのは、顔しかありません。
いい心を持っていると、顔もよくなる。
いい顔は、相手の心も明るくする。
相手の心もよくなると、いいコミュニケーションが生まれる。
いい顔、いい心は、いいコミュニケーションを生むのです。
この三位一体こそ、人間の幸せの基本ではないかと思います。
役割としての顔もあります。父としての顔、母としての顔、社会人としての顔、社長としての顔、企業の顔、国家の顔、、、etc
それぞれ、その顔には、役割としての「責任のある顔」が必ず存在しているのです。その顔は、人々にしっかり見られているのです。
なぜなら、人は顔に敏感に反応する性質があり、顔が好きだからです。
顔に責任がないと、一瞬の表情が相手を傷つけることもある。
顔に責任を持っていると、ちょっとした笑顔でさえ、相手を救うこともある。顔には、すごい力があるのです。
あなたの笑顔が、これからの地球、将来の日本、未来の子供たちにつながっていきます。
ONE&ONLYのあなたの笑顔は、あなたの何を表現しているのですか?ONE&ONLYのあなたの人生。
人と比べても仕方ない。
あなたの笑顔があなたを表しているのです。
そして、あなたの笑顔が誰かを幸せにするのです。
そんな未来を作りたいものです。
広瀬 真奈美
表情評論家・笑顔トレーナー
>> プロフィールはこちら